マクドナルドに関する考察第二弾です。

前回はマクドナルドの商品政策と外食産業を
取り巻く環境変化について考察しました。

今回は商品政策以外にサービス・空間管理、
経営戦略と最後にマクドナルド復活の方策に
ついて考えていきたいと思います。

■QSCを怠ったマクドナルド

マクドナルド最大の失敗はお客様の望む商品
を投入してこなかったこと=日々変化するお客
様ニーズに対応した商品政策を取れなかった
こと。
(Q:クオリティ=料理レベルの低下)

わたしはそう思っているのですが、他にも間接的
ですが何点か要因が考えられます。

まず一点目がお客様が望むサービスを提供でき
なくなってきたこと。
これもマクドナルドにとって深刻な問題だと思い
ます。
(S:サービス=接客レベルの低下)

マクドナルドに行って思うのは昔に比べて明らかに
サービス力が落ちているということです。

笑顔なし、気使いなし、単にオペレーション(作業)
だけしている店員が増えてきていると感じます。

厨房は人がいないのか殺伐としており、社員の
ああしろ・こうしろ指示が飛び交っています。

また都心店舗では人手不足から外国人店員と
50歳以上とおぼしき店員が増えています。

外国人や年配の方を活用することにわたしは異論
はありません。
しかし問題はその人たちの教育が行き届いていない
ということです。

ひどい店になると日本語がほとんどしゃべれない
外国人がレジにいて、何を言ってるか分からなかっ
たり、教育をあまり受けていないと思われる年配者
が新人の年配者を教えている光景を見たりします。

また店内の客席はどこも湿気がちだし、隣の席との
間隔が狭く座りずらいカウンターが多数です。
テーブル・カウンター上は衛生的でなく不快感を覚え
ることが多いです。
(C:クレンリネス:衛生・清掃レベルの低下)

今やドトールでさえゆったりした席を設けるよう店
舗を改装し、居心地の良さを追求している時代に
も関わらず、マクドナルドは時代の流れに逆行し、
席数確保・席回転重視の経営を行っています。


■原田泳幸という外食を知らない人が経営を
 行ったツケ


なぜマクドナルドは以前に比べてサービス(S)、
クレンリネス(C):空間管理レベルが低下した
のでしょうか?

それにはわたしは原田泳幸氏の社長就任と米国
本社の意向が大きかったと思っています。

例えば彼は収益率向上のためにFC化を推進
しました。

FCとは本来事業家を育てる観点から始めるべ
きシステムだとわたしは思います。
しかし彼はFCを単なる儲けの道具に使いました。
(FC化による利益率向上)

FC化はそれまでマクドナルドを支えてきた直営店
社員の大量退職を促し、結果人材面から店舗運営
の弱体化を招きました。

またマクドナルドを愛し、マクドナルドを隅々まで
知り尽くした古参の幹部たちのほとんどを退職に
追い込みました。

少しくらい考えが違うからといって、人をどんどん
切り捨てるような、人を大切にできない経営者・マ
ネージャーは失格だとわたしは個人的に思います。

これらのことはマクドナルドを分析した書籍な
どによく書かれていることですが、わたしは実
際にマクドナルドを退職した社員から聞きました。

またマクドナルドで働いていたアルバイトさんは昔
からよく面接しますが、ここ最近面接に来る元マクド
ナルドアルバイトの方の質は明らかに落ちています。

そして皆あまりマクドナルドで働いていたことを誇
りに感じていないのです。
これは10年前と今との一番の違いです。
(以前面接していた時はマクドナルドは楽しかった、
成長できた的なことを言う方は多かったです)

外食産業はPCなどの工業製品を作ったり・売っ
たりする製造業や販売業、これまでにない新しい
サービスをネット上で展開するIT業界とは全く違
なります。

またマーケティングと称して価格をいじり、クーポン
を発行し、CMを打ち、露出を増やせば売上が上
がるといったそんな小手先で何とかなる業界でも
ありません。

外食産業とはお客様がお店に来店し、料理を食
べておいしい!と感じ、ちょっとした幸せを感じ、
店員にありがとうと直接言えて、そのありがとうに
喜びや仕事のやりがいを感じるスタッフたちがが
集う、きわめて人間臭い場所です。

肉体労働・単純作業というきつい職場であるにも
関わらず、外食で働く人たちが日々頑張れるの
は、お客様からの感謝を直接肌で感じることが
でき、また一緒に力を合わせて働ける仲間がいる
からです。

外食産業は典型的なピープルビジネスです。
人が全て、人こそ財産である業界です。

原田氏は外食産業がピープルビジネスということ
を真の意味で理解できていなかったのではない
でしょうか?
(カサノバ現社長もそこを理解しているとは思え
ませんが・・)

これはわたしの独断と偏見ですが、原田氏は
企業の目的を儲けることに定めている経営者
のように見えます。

わたしは儲けることは目標であったとしても目的
になってはいけないと思っています。

目的はあくまでお客様の満足であり、その総和が
売上・利益になるということを忘れてはいけないと
思います。

原田氏のお客様第一とは儲けるための第一で
あって、決してハンバーガーを通じてお客様に
ちょっとした幸せを感じてもらおうという飲食店本来
のお客様第一ではなかったのではないでしょうか。


■マクドナルド復活のカギはたったひとつ。
 「おいしいものを提供すること」。それだけ。


店内を改装したり、制服変えてみたり・・
これらの政策に意味がないとは言いませんが、
それでは本質的には何も変わらないでしょう。

まずは商品が変わらないとダメだと思います。
あとは店で働くスタッフの意識。

異物混入があまりにクローズアップされ過ぎて
いて本質が見えなくなっていますが、本質は
カサノバ社長がマスコミの前に出てきて謝ら
ないからとかそんなことではありません。

それはそれで非常に大切なことですが、安心・
安全すら提供できない飲食店などそもそも存在
意義がありませんから、そこが改善されたところ
でマクドナルドが即復活するわけではありません。

不振の最大の要因は変化するお客様ニーズに
合わせた商品・サービスを提供してこなかった
こと。この一点です。

したがってここを地道にやっていくことが復活の
第一歩です。

これまでのマクドナルドハンバーガーの概念を
覆すほどのおいしい商品を提供し続けること。
提供することではなく、「提供し続けること」が
大切だと思います。

これが実現できれば間違いなくマクドナルドは
復活できるでしょう。

しかしこれまでのように機をてらった新商品を
少しずつ投入してみたり、数字に頼ったマーケ
ティング戦略を展開しているようでは、いずれ市
場から淘汰される日が出てくるかもしれません。


マクドナルドを見ていて思うのは、これは決して
他人ごとではなく、わたしの働いている会社の
お店もいつなんどき市場から見捨てられる日が
やってくるとも限りません。

決して現状に甘んじることなく変化し続ける勇気
を持ち続けること。

このDNAを組織が持ち続けることができれば
競争に打ち勝ち存続していくことができる。
わたしはそう信じています。

挑戦の日々はこれからも続きます。


「強いものが生き残るのではない、変化で
きるものが生
き残る」


                ダーウィン